12月20日 日曜日 19時32分 古田宅

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12月20日 日曜日 19時32分 古田宅
第四章 11
五の線 第四十話.m4a.mp4
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古田と片倉は今後の捜査について綿密に打ち合わせをしていた。一色の高校時代の交友関係を当たるためには、彼らの情報を仕入れねばならない。県警に戻ってそれらを一旦整理したいが、自分たちがこそこそと水面下で動いていることが松永たちに露見すると、少々厄介なことになる。今日は自分たちの頭の中を整理することとし、明日の日勤時にさりげなくそれらの情報を取得することにした。

「しっかし、なんでまたこんな事件が起こるんや。」

片倉はごろりと畳の上に転がった。

「ほやからあいつは好かんかったんや。ウチを引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、このありさまや。ほんとにキャリアってのは好かんわ。松永も一色も同類や。」

「片倉ァ。ほんなこと今さら言うなや。」

「だから俺はさっさとこの仕事辞めたかったんや。なんか大きな災厄が降りかかってくる気がしたんや。」

「だら。」

「あん?」

「だらやお前。いつからそんな腐った男になったんや。」

「なんやて。」

「いくらでも言ってやるわ。お前、いま県警が置かれとる立場わかっとらんげんろ。前代未聞の信用失墜や。そんなお家の一大事のときに、捜査の最前線の陣頭指揮を執るべき人間が、間違ってもそんなこと口にするんじゃねぇわいや。お前がなんで今捜査一課の課長を拝命しとるか、いっぺんでも考えたことがあるんか。あん?」

「…。」

「お前が一色のことをよく思ってなかったのは分かる。事実お前はいろいろ一色に意見した。ほやけど今までにあいつがお前に何かの報復措置をしたことがあるか?ねぇやろ。」

「…。」

「キャリアっちゅうやつはプライドが高い奴が多い。ほらほうや。難関試験をパスしてきたエリート達やからな。そんな奴らから見たらワシらなんかカスみたいなもんや。汚れ役とか地道な作業は現場。自分は指示するだけ。しかも机の上で考えた頭でっかちの指示や。ほんでワシらが抑えた手柄は全部自分のもの。現場を踏み台に出世や。そのくせ何かトラブルがあれば現場の責任。ワシも二課でいろんな頭でっかち連中相手にやりとりしとったから、そんなことぐらい分かるわ。けど、あいつは他の連中とはちょっと違っとった。」

「…なにがや。」

「考えても見いや。あいつは現場主義や。単独行動もいっぱいあった。ほやけどそのトラブルを現場の連中に押し付けたことなんかあったか?あいつはあいつなりに責任を取っとったわ。ほやからずーっとここの県警勤務なんや。」

まるで容疑者である一色を庇うかのような発言に不快感を抱いた片倉であったが、古田の言うことには一理ある。確かに自分の意見を取り合ってくれないことばかりだったが、それが為の不利益を被ることはなかった。厳命を発することはしたが、自分を捜査から外すといったことは一度もない。それを考えると松永と同列に論じるのは適切ではない。

「んー…トシさん、悪かった。おれが間違っとった。」

天井を見ていた片倉は身を起こして、古田と向い合って頭を下げた。

「すまん。」

「気にすんな。長い付き合いやろぅ片倉。」

「しかしだ…。そんなできた男が今回の連続殺人事件を起こしたとは…。考えれば考えるほど納得がいかなくなる。」

「片倉ァ。それはワシも同じや。まぁとにかく逮捕あってのことや。そんためには本庁様の働き振りに期待をするとして、ワシらはとにかく別の方面から手がかりを掴むことに専念するとしまいか。」

「あぁ。」

片倉の携帯電話が鳴った。発信者名は朝倉忠敏であった。

古田は片倉に電話にでるよう、手で合図した。

「はい片倉です。…ええ。大丈夫ですが…。えっ!?なんでですか。…ええ、います。分かりました、いまからそちらに行きます。」

「どうした。」

電話を切った片倉に古田は言った。

「特捜からお呼び出しや。」