· 

12月20日 日曜日 18時10分 古田宅

ダウンロード
12月20日 日曜日 18時10分 古田宅
第四章 8
五の線 第三十七話.m4a.mp4
MP4動画/オーディオファイル 7.9 MB

「部長と穴山と井上の接点というのは、こんなところや。」

「でもトシさん。その二人と部長の接点があるのはわかったけど、おれはイマイチ動機が明確じゃあ無いような気がする。」

「と、言うと?。」

「そりゃあ自分の恋人がレイプされれば、犯人を殺してやりたいっていう感情を抱くのは、あたりまえや。言うなればその部長の感情は一般的なものや。」

「それはわしもそう思う。けど、こん時の最後の行が妙に引っかかってな。」

「…やるかやらないか、それが問題だってセリフか。」

「ああ。」

片倉は手にしていたノートを一旦畳んで、天を仰いだ。

「トシさん。要点を整理しよう。」

「ん?」

「部長は、いや一色は穴山と井上に何かしらの制裁を加えたかった。」

「うん。」

「そしてその制裁にはスピードが必要だった。」

「そうや。」

「仮に今回の事件がその制裁だっとしよう。前者はクリアするが後者はどうだ。」

「そうやなぁ、決して早いとは言えん。」

「穴山と井上を首尾よく殺したのはいい。だが、その後の桐本由香と間宮孝和はどうなる。こっちの方は一色と接点が見いだせない。」

ふたりとも黙ってしまった。

「片倉、おれも初めは今のお前のように考えた。でも接点とかこだわっとると、なかなか自分の中のストーリーが展開していかんがや。」

そうならそうと先に言えと言わんばかりの憮然とした表情で、片倉は古田を見た。古田は片倉の顔を見て失笑し、話を続けた。

「すまん。まぁ聞いてくれや。さっき北高に行ってきたんや。」

古田は背広のポケットから幾重にか折りたたまれた何枚かのコピー用紙を取り出して、畳の上にそれを広げた。

「卒業アルバムの写や。全部で12枚ある。」

そのコピー用紙一枚毎に一名の卒業生の顔写真がコピーされていた。それぞれ写真の下に名前と生年月日、そして当時の住所が記載されていた。当然その中には高校時代の一色の顔写真もある。

「これは何や。」

「一色の部活動の同期連中や。」

「一色の高校時代と今回の事件、何の関係があるんや。」

「まぁそう結論を急ぐなや片倉。いいか捜査っちゅうもんは、ひょんなところから手がかりが生まれてくるもんや。そのためには一見無駄と思える現場も手当たり次第当たる必要がある。」

古田は12枚のコピー用紙の中から、一枚の紙を手にとって片倉の方に手渡した。

「おまえ、こいつに見覚えないか。」

渡された顔写真を見て、片倉はしばらく考えた。しかし思い当たる節はない。

「じゃあこの写真は。」

そう言って、古田はプリントされた別の写真を彼の前に差し出した。その写真は、遠いところからズームを使って撮影されたのか、荒い画像であった。サングラスをかけた男が車の側に立っていた。白いセダン型の高級車の横に堂々と立って誰かと待ち合わせしている様だ。

「よく見てみろ。」

片倉は、両者の顔の特徴を観察した。少し釣り上がった口元。頬のコケ方。これらは古田の言うとおり類似する。片倉は自分の頭の中で、卒業写真の方の男にサングラスをかけさせた。

「トシさん…こいつ…」

片倉は唾を飲んだ。

「鍋島惇。」