12月20日 日曜日 15時48分 県警本部内

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12月20日 日曜日 15時48分 県警本部内
第三章 6
五の線 第二十八話.m4a.mp4
MP4動画/オーディオファイル 7.9 MB

「あぁトシさんか。捜査の方は進んでるか。あのな、未明の遺体の身元が分かった。メモとれるか。」

「はい大丈夫です。控えられます。」

「ひとりは穴山和也23才。住所は銚子。もうひとりは井上昌夫23才。住所は土清水だ。」

「穴山と井上…。」

古田の反応にかなりの間があった。気になった本部長の朝倉はそれについて問いかけた。

「どうした、トシさん。」

「…本部長。」

「何だ。」

「申し訳ございません。」

「は?」

「私、本部長に報告しておりませんでした。」

「トシさん。俺はあんたの言ってることがよく分からんが。」

「その名前、知っています。」

「あぁ、もう知っていたか。」

「いえ、違います。その男らの名前は三年前から知っています。」

刑事部の一角に設けられた来客用のスペースにあるソファに腰をかけ、そこに配された固定電話から電話をしていた朝倉は、自分と向かい合って座っている片倉の方を見て動きを止めた。

「なんだと。」

片倉は朝倉の表情を見て何か重要な情報が電話の向こう側からもたらされそうなのを察し、とっさに電話のスピーカボタンを押した。

「その二人はレイプ犯です。三年前、当時二課の課長だった一色の交際相手を強姦したと思われる男たちです。」

朝倉と片倉は驚きの表情でお互いの顔を見合った。

「そんな話、こっちまで上がっていないぞ。」

朝倉の言葉に怒気が含まれていた。

「本部長、この件は事件になっておらんのです。」

「まさか…親告されていないからか…。」

「そうです。」

「くそっ!!」

喜怒哀楽をあまり表に出さない朝倉だったが、この時は感情的だった。目の前のテーブルを力一杯叩いた。

「本部長、落ち着いてください。私が代わりに電話に出ます。」

感情的になっている朝倉を落ち着かせるために、片倉は彼から受話器を奪った。

「トシさん、おれだ。」

「片倉。」

「一部始終は聞かせてらった。何でそんな大事なこと黙っとったんや。」

「すまん、部長命令や。」

「そうか…」

そう言うと片倉はそのまま腕を組んで、朝倉の方を見た。彼はすぐに冷静さを取り戻したのか、こちらの方を見て続けろと合図した。

「トシさんだけか、その事知っとる奴は。」

「多分な、後は当事者と部長しか知らんやろ。」

「なんでトシさんには部長は話したんや。」

「さあ、何でやろうな。ただ当時、部長が鬼捜査しとる中で精神的に参っとったのは、俺は端から見ても感じ取れたけどな。だから、こっちから声をかけたんや、部長に。そしたら話をしたいことがあるって打ち明けられた。で、被害者が告訴するつもりがないようやから、自分で独自に捜査して犯人はある程度確定しとるって言っとった。できることなら、こいつらを法の下で裁いて欲しいと切に訴えとった。でも、被害者本人のことを考えるとどうにもできんと。なんとかこの事件のオトシマエをつけたいと言っとった。」

「で、殺してしまったってとこか。」

片倉がそう言うと、その場に沈黙が流れた。その沈黙を破ったのは古田だった。

「現状の物証とか因果関係を考えると、そう考えると一番説明がつく。ただ…。」

「ただ?」

「いや、なんでもない。」

二人のやり取りをその場で聞いていた朝倉は、片倉に電話をかわるよう指示した。

「トシさん。幸い松永はその事は知らないようだ。どうだ、片倉とトシさんで捜査を続けてくれないか。」

「本部長。」

突然の朝倉の提案に、意表をつかれた。

「片倉も松永には相当頭が来ているみたいだ。自分の家のことは自分たちでオトシマエつけた方がすっきりするじゃないか。」

「いいですが…。」

「よし、決まりだ。」

そう言うと朝倉は片倉の方を見た。

「わ、わかりました。」

片倉は戸惑いながらも命令に従った。