五の線 · 09日 1月 2017
この度「五の線2」の配信を無事終了することができました。 これもひとえにご視聴下さいました皆様のおかげです。本当に有難うございました。...
五の線 · 31日 12月 2016
コミュの会場となった会館前には複数台のパトカーが赤色灯を灯して駐車していた。会館には規制線が敷かれ関係者以外の立ち入りは厳禁となっている。週末金沢駅の近くということもあって、このあたりで仕事帰りに一杯といった者たちが野次馬となって詰め寄せていた。規制線の中にある公園ベンチには、背中を赤い血のようなもので染め、遠くを見つめる下間麗が座っていた。 「ついては岡田くん。君にはこの村井の検挙をお願いしたい。」 「罪状は。」 「現行犯であればなんでもいい。」 つばを飲み込んで岡田は頷いた。 「よし。じゃあ君の協力者を紹介しよう。」 「え?協力者?」 奥の扉が開かれてひとりの女性が現れた。 「岩崎香織くんだ。」 岩崎は岡田に向かって軽く頭を下げた。 「岩崎…?」 ーあれ…この女、どこかで見たような…。 「近頃じゃネット界隈でちょっとした有名人だよ。」 「あ…。ひょっとしてコミュとかっていうサークルの。」 「正解。それを知っているなら話は早い。そのコミュってのが今日の19時にある。そこにはさっきの村井も共同代表という形でいる。」 「村井がですか?」 「ああ。」 「君には岩崎くとにコミュで一芝居うって欲しい。」 「芝居…ですか。」 「ああ。芝居のシナリオはこちらでもう用意してある。君はその芝居に一役噛んだ上で、流れに任せて村井を現逮してくれ。君らが演じる芝居が村井の尻尾を出させることになるはずだ。」 「大任ですね。」 「お疲れさん。」 彼女の横に座った岡田がミネラルウォーターの入ったペットボトルを差し出した。それを受取った麗は何も言わない。 「迫真の演技やったな。」 「…。」 「それにしても村井の奴、お前が刺されて倒れとるっていうげんに、お前んところに駆け寄ってくることもなく、淡々と参加者を煽っとった。」 「…。」 「薄情なもんやな。」 「…そんなもんですよ。」 「ん?」 「私はいつもそういう役回りだった。みんなロクに新規の参加者の獲得もせずに、能書きばっかり垂れてる。私は自分が唯一人より優れている外見を活用して新規の参加者を獲得してるのに…。私自身は全く評価されなかったわ。」 「ほうか…。」 「何かの度に私をヴァギーニャとか言って持ち上げるくせに、楽屋裏では私に対する妬みばかり。挙句の果てに私が色仕掛けしてまで参加者を獲得しているなんてデマまで流して…。」 「酷ぇな。それ。」 麗はペットボトルに口をつけた。 「…でも、兄さんはいつも私のことを心配してくれた。」 「兄貴ね…。」 「コミュの皆をまとめるために、時には周りと同調するようにあの人は私のことを責め立てた。でもその後直ぐにフォローの電話をしてくれた。お前には辛い思いをさせているがもう少しの辛抱だって。」 「妹思いの兄ってやつか。」 「でもその兄さんも、お父さんもあなた達に捕まってしまった。」 「麗。お前の話は本部長からひと通り聞いたわ。」 「そう…。」 「はっきり言うけど俺はお前に同情はせん。」 岡田は麗を断じた。 「さっきも放っといたらヤバいことになっとった。コミュの連中を原発まで動員してあそこで騒ぎを起こす傍ら、俺を片町のスクランブル交差点にトラックごと突っ込ませて、テロをする予定やったんやからな。」 麗は黙って岡田を見た。 「そんなもんを企てとったお前の兄貴と親父は法によって裁かれる。これはこの国では至極当たり前のことや。俺らはその当たり前のことを実行するために居るんやからな。」 「兄さんとお父さんはこれからどうなるの。」 「わからん。こっからは俺ら警察の管轄じゃない。」 「そう…。」 岡田は一枚の紙の切れ端を取り出してそれを麗に渡した。 「なに?…これ。」 「本部長が言っとった約束のあれや。お前が捜査に協力してくれれば母ちゃんの面倒をお前が見れるようにさせるって。」 「何よこれ…住所が名古屋じゃない…。お母さんは都内の病院にいるって言ってたわよ。」 「ほうや。お前の母ちゃんは都内の病院や。こいつは入管の住所。」 「入管?」 「入管にも話し通してあるってよ。麗。まずはお前はここで難民申請をしてこい。申請してこの国の方に則って、晴れてこの国で誰にもはばかることなく下間麗として暮らせ。」 「え…。」 「んで母ちゃんの看病をしてやれ。」 麗はメモに目を落とした。 「俺らは下間麗なんて人間のことは何も知らん。」 「岡田さん…。」 「ほんじゃあ、お前のことを待っとるやつが居るから、俺はここでお別れや。」 「…。」 「晴れて日本で暮らせるようになったら、いつでも俺を訪ねて来い。」 メモには携帯電話の番号が書いてあった。 「そこに突っ立っとる主演男優と一緒にな。」 そう言って岡田は彼女に背を向けた。 規制線の外に出た岡田はそこに立っている男の肩を叩いた。肩を叩かれた男は駆け足で麗の方に向かって来た。 「長谷部君…。」 麗の側まで駆け寄った長谷部はなにも言わずに彼女を抱きしめた。麗の瞳から涙が溢れ出した。 「麗…。ごめん…力強すぎた…。」 抱きしめながら麗の背中を擦る長谷部の様子を、相馬と京子の2人は遠巻きに見つめていた。 冨樫は何も言わずに机の上に古ぼけたカメラを置いた。 「下間。これは何や。」 「何って…カメラだ…。」 「見覚えは?」 下間は首を振る。それを見た冨樫は落胆した表情になった。 「何だ。」 「…これはな。仁川征爾の持ちもんなんや。」 「仁川…。」 「お前の息子がお前に言われるがままに背乗りした、仁川征爾のな。」 「…そうか。」 「お前やな。征爾の両親を事故に見せかけて殺したんは。」 下間は頷く。 「なんでほんなことしたんや。」 「愚問だ。俺らには仕事の選択権はない。上の言うことはすべてだ。上が指示を出したからやった。以上だ。」 「上とは。」 「執行部。」 「朝倉は。」 下間は苦笑いを浮かべた。 「関係ない。当時はまだあいつは公安だったはずだ。俺らとあいつはむしろ対立関係にあった。」 「じゃあその執行部とは。」 「本国だ。」 「ツヴァイスタン本国。」 「そうだ。」 下間はため息をついた。 「でなんだ。そのカメラ。」 「あいつの両親を世話したおっさんがまだご存命でな。このカメラ持ってずっと征爾の帰りを待っとる。んでな、そのおっさんがこう言うんや。もしも征爾が生きとったらこいつで写真撮って自分のところにそれ送ってくれ。もしも征爾が死んどったらこのカメラを墓にでも供えてくれって。」 「そうか…気の毒なことをした。」 下間は天を仰いだ。 そして口をつぐむ。 「…冨樫とか言ったな。」 「…おう。」 「それは随分と古いカメラみたいだが、ちゃんと動くのか。」 「あ?ああ…。動作確認はできとる。」 「じゃあそのおっさんに仁川の写真撮って送ってやれ。」 「え…?。」 「仁川征爾は生きている。奴はツヴァイスタンに拉致された。」 取り調べの様子を記録している捜査員の手が止まった。 「なに?」 「言っただろう。仁川はツヴァイスタンにいる。」 「お…お前…そいつは…本当のことか…?」 「ああ。お前ら警察は掴んでたんだろう。」 冨樫は口をつぐんだ。 「ツヴァイスタン工作員による拉致は掴んでいたが何もできなかった。なぜならそれがセンセイ方の意向だったから。」 「…。」 「拉致問題があると言って、日本はツヴァイスタンに拉致された国民を奪還する術はないからな。」 「現状はな。」 こう言った冨樫の顔を見た下間はニヤリと笑った。 「本気なのか。政府は。」 「ワシはただの末端公務員。政府中枢の思惑はわからん。」 「今回の手際の良い警察の動きを見る限り、俺には伝わってくるよ。」 「そうか。」 「ふっ…。これで少しはまともな国になるかもな。」 「12月24日お昼のニュースです。政府は24日午前、2015年度第3次補正予算案を閣議決定しました。今回の補正予算は今年10月に国家安全保障会議において取りまとめられた「日本国の拉致被害者奪還および関連する防衛措置拡充に向けて緊急に実施すべき対策」に基づいた措置を講じるためものです。 この予算案では先ごろ国内で発生したツヴァイスタンの工作員によるテロ未遂事件を受けてのテロ対策予算の拡充として500億円。ツヴァイスタンに拉致された疑いがある特定失踪者の調査費として28億円。近年日本海側で脅威となっている外国船の違法操業対策および外国公船の領海侵入対策として海上保安庁の予算を新たに1,000億円追加します。あわせてツヴァイスタン等によるミサイルの脅威に対抗するため、新たに5兆円の防衛予算を措置します。防衛予算においては国際標準である対GDP比2%の達成を継続的に維持するため、来年度の本予算においては今回の補正予算の5兆円を既に盛り込んだ10兆円とする予定です。これで今回の補正予算における予算額は合計で5.1兆円となります。これはリーマンショック以降の補正予算としては過去最大規模のものとなり、政府はこの内の5兆円を赤字国債の発行によって財源を捻出します。 また、政府は今回の安全保障政策の拡充を図る財政政策を積極的に行うことで、現在の日銀による金融緩和政策と連携して、デフレ脱却の起爆剤にすることをひとつの目標としています。 それでは今回の補正予算についての総理のコメントです。」 テレビの電源を切った片倉は立ち上がった。 「もう行くん?」 「ああ。やわら行かんとな。」 「次はいつ家に戻って来るん?」 「そうやな…。」 「新幹線は3月14日に開通するらしいわよ。」 「あ…そうか…その手があったか。」 「2時間半で東京やし、私もいつでも行こうと思ったら行けるわね。」 「ふっ…来ても相手出来んかもしれんぞ。」 「別にいいわいね。あなたが相手できんがやったら若林さんと一緒にお茶でもするわ。」 「え…。」 片倉は絶句した。 「嘘よ嘘。あの人つまんない人なの。」 「どこが。」 「だって少しは不倫しとる感じださんといかんから、手でも繋ごっかって言ったら、ボディタッチだけは勘弁してくれって。後で変な誤解が生まれたらあなたにどつかれるって。」 「ふっ…。」 「ぱっと見韓流スターみたいで素敵なんやけどねぇ…。」 「やめれ。」 「あ怒った。」 「怒っとらん。」 そう言って片倉は妻を抱きしめた。 「京子は?」 「ほら、またあなた忘れとる。」 「何が。」 「今日はクリスマスイブやよ。」 「あ…。」 「相馬くんとデートでもしとるんやろ。」 妻の肩越しに片倉は笑みを浮かべた。 「え?東京に?」 「うん。」 相馬と京子は昭和百貨店の一階にある喫茶店にいた。 「なんでまた。」 「知らんわいね。」 プリンを食べ終わった相馬はナプキンで口を拭った。 「あれ?」 「なに?」 「ちょ…京子ちゃん…。」 遠くを呆然として見つめる相馬に京子は怪訝な顔をした。 「だから何ぃね。」 「ほら…あそこ…。」 相馬が指す方を京子は振り返って見た。 「え…。」 そこには山県久美子が猫背の男と向かい合って座っていた。 「東京に行かれるんですか。」 「ええ。」 「どうしてまた。」 男は胸元からハンカチを取り出した。 「あ…。」 「覚えてらっしゃいますか。これ。」 「ええ。」 「こいつを渡してこようと思いましてね。」 「たしか…娘さんでしたっけ。」 「おお、よく覚えてますね。」 「だって古田さんみたいな人がウチの店にひとりで来るなんて、普通ないシチュエーションですから。」 「あ、やっぱり。」 2人は声を出して笑った。 「それにしてもあれから随分と日が経ってますけど。」 「ええ、ちょっと立て込んどってなかなかあいつのところまで行けんかったんですわ。」 「そうですか。」 「まぁあんたとこうやってここで茶を飲めたのも何かのご縁やったってことですわ。」 「そうかもしれませんね…。」 そう言ってコーヒーを口に運んだ時のことである。久美子の動きが止まった。 「どうしました?」 笑みを浮かべた久美子は古田の後ろを指さした。彼はそれに従って振り返る。 「あ。」 「そう言えば今日はクリスマス・イブでしたね。古田さん。」 ポリポリと頭を掻いた古田は苦笑いを浮かべた。 「はいもしもし。はいええ…。ですからブログ記事の出版はお断りしてるんですよ。え?どうやって取材?知りませんよ。おたくも出版社ならそこら辺のノウハウあるでしょ。ええ…はい…ですからそれはできません。」 黒田は眉間にしわを寄せながら電話を切った。 「...ったく...あいつら何なんだよ。なんで俺がブログ書いた人間だってわかるんだよ。」 「すごいっすね。黒田さん。あれから半年も経ってんのに、まだ出版社からバンバンオファーがあるじゃないっすか。」 「あん?」 「俺は思ってましたよ。黒田さんはできる男だって。」 「なんだよ三波。お前気持ち悪いぞ。」 「いや。黒田さんこそジャーナリストっす。会社の他の記者連中にも爪の垢煎じて飲ませてやりたいっすよ。」 「キモい。」 「黒田さん。実は俺いまネタに困ってるんですよ。何か旨いネタありませんかね…。」 「ない。自分の足で稼げ。」 「そんなこと言わずに。」 そうこうしている間に黒田の携帯が鳴った。 「はい。…え?金沢銀行と高岡銀行の合併!?マジですか!?」 電話を切った黒田は急いでノートパソコンをリュックにしまった。 「ヤスさん!」 「何だよ。」 「ヤスさん。今から金沢銀行です。」 「えぇ…今日は定時で帰らせてくれよ。」 「駄目です。スクープです。」 「そんなこと言わずたまには三波にも譲ってやれよ。お前が出張ると必然的に俺がカメラ回すことになるんだからさ。」 「そうですよ黒田さん。安井さんの言うとおりですよ。黒田さんも安井さんも働きすぎです。」 「つべこべ言わないで下さい安井さん。行きますよ。」 「嫌。」 「なんで!」 「だってお前口臭ぇもん。」 安井は鼻を摘んだ。 「うるさーい!」 「年内に医者行ってなんとかするって言ってたじゃん。」 「それとこれ何の関係あるんですか!」 「…ねぇな。」 笑みを浮かべた安井はカメラを取りに控室へ向かった。 昭和百貨店を出た相馬たちはバス停でバスを待っていた。 「今日はお休みなんですか?」 「うん。」 「だってクリスマスやし、店混んどるんじゃないんですか。」 「いいの。今日はちょっとゆっくりしたいの。なに?京子ちゃんウチの店手伝ってくれるの?」 「え?今日?」 「うん。」 京子は相馬を見た。彼はしょうもない顔をしている。 「ははは。嘘よ。そんなことしたら相馬君が怒っちゃう。」 「う…うん…。」 「あのね今日はお墓参りに行こうと思ってるの。」 「あ…。」 「最近忙しくってなかなか行けなかったから、あの人のところに行こうと思ってね。」 「一色さんですね。」 久美子は頷いた。 「熨子山行きのバスは後30分後ですね。」 「うん。」 「それにしても古田さんも水臭いですね。」 「え?」 「あとは若いもんでクリスマスイブの楽しい時間を過ごしてくれって行って帰ってしまった。」 「あ…何かあの人、東京の方に行くらしいよ。」 「え?東京?」 「うん。だから私にお別れを言いに来たみたい。」 相馬と京子の表情が変わった。 「京子ちゃん。」 「周。」 「なに二人とも。」 「これってアレじゃねぇが。」 「周もそう思う?」 「おう。」 「何よ2人揃って…。」 困惑した久美子をよそに相馬と京子は何やらブツブツとお互いの意見を交換しているようだった。 「久美子はこれから熨子山の一色の墓に行くみたいです。」 「そうか。」 「ワシはこれからあいつを付けます。」 「頼む。なにせ鍋島の特殊能力の影響を受けて存命する数少ない人間のひとりだからな。」 「はい。しかし石電の警備員が自殺とは…。」 「鍋島の妙な力のメカニズムが解明されないことには、あの事件は本当の意味で解決したことにはならないからな。」 「片倉から聞いています。都内でもなんや常識じゃ考えられん殺しが起こっとるって。」 「そのための片倉招集だ。」 「休む暇なしですな。松永理事官。」 「あーあ本当だよ。古田、お前も片倉と一緒にこっちに来いよ。こっちは猫の手も借りたいんだ。」 「勘弁してください。ワシはここで片倉の代わりに久美子を監視することに専念させて下さい。わしも年で正直身体が言うこと効かんくなっとるんですわ。」 「撃たれてもまだ久美子の監視に従事してんのに?」 「ははは。まぁあとわし結婚式も出んといかんですから。」 「あー佐竹のか。...えっとあれはいつだったっけ。」 「明日ですよ。」 「明日!?マジか。」 「マジっす。」 「...そいつは良かったな。おめでとう。」 「一色の同僚警官からのお祝いの言葉、あいつにしっかりと伝えますよ。」 古田はクリスマスの電飾光る香林坊の並木道を眺めた。コートなどの防寒着に身を包んだ通りを行き交う者たちは皆、一様に笑顔である。 「あ。」 「何だ。」 「そういやぁ理事官もやわらご結婚っちゅう歳...。」 「うるさい。構うな。」 「なんか良い人おらんがですか。」 「その話はもうするな。俺は恋などとうに忘れた。」 「それ...どこかで聞いたような...。」 「切るぞ。後は頼んだぞ。」 一方的に電話を切られた。 「なんだかんだ言ってワシはまだまだおもろい奴らと仕事できとるわ。」 ポケットに手を入れた古田の頭に冷たいものが当たった。ふと空を見上げるとそれははらはらと舞い降りてくる粉雪たちであった。 「えーっと明日の挨拶どうすっかな...。」 完
五の線 · 31日 12月 2016
金沢駅近くの会館。この一階の大ホールに大勢の人間が集まっていた。コミュの定例会である。参加者は先日のものより数段多い。これも岩崎香織が電波に乗った効果なのだろうか。 「みなさん。こんばんわ!」 司会者が参加者に向かって大きな声で挨拶をするとそれに参加者は同じく挨拶で応えた。...
五の線 · 30日 12月 2016
ドアをノックする音 「来たか。」 朝倉はドアに向かって部屋に入るよう言った。 長身の男がドアを開け、ゆっくりとした動作で部屋に入ってきた。 「え…。」 片倉の存在に気がついた男は思わず立ち止まった。 「なんでお前がここに…。」 「これは…どういうことなんや…。」 「部長。これはどういうことですか。」...
五の線 · 30日 12月 2016
霞が関合同庁舎の前に立った片倉は、登庁する職員に紛れていた。皆、言葉も何もかわさずただ黙々と歩き続ける。立ち止まった彼はおもむろに携帯電話を取り出して電話をかけた。 呼び出し音 「片倉です。おはようございます。」 「おはよう。いまどこだ。」 「公庁の前です。」 「なに?予定は15時だぞ。」...
五の線 · 29日 12月 2016
「下間確保しました。」 「了解。」 「これからマサさんと下間の通信手段を抑えます。」 「わかった。くれぐれもホンボシに感づかれないように注意しろ。」 「了解。」 土岐は無線を切った。 「いい流れだね。」 「はい。」...
五の線 · 29日 12月 2016
「ご苦労さん。トシさん。今どこや。」 「病院や。」 「傷は。」 「幸い大した事ない。」 「…良かった。いきなりガサッっていってトシさんうめき声出すんやからな。」 「ふっ。ワシも長いサツカン人生で撃たれたのは初めてやわいや。こんでしばらく手は上がらん。」 「痛いんか。」 「あたりめぇや。だらほど痛いわ。」...
五の線 · 28日 12月 2016
「こいつとお前を殺す。」 銃口を向けられた古田は微動だにしない。 「…心配するな一瞬だ。」 「ふっ…。」 「なんだ。」 「最後の最後でチャカか。あ?鍋島。」 「なんだてめぇ。」 「お前は散々人を殺めた。その手口は全て絞殺もしくは刺殺。チャカは使わん。そんなお前がここにきてチャカを手にした。」 「だから何なんだ。」 「相当切羽詰まっとれんな。」...
五の線 · 28日 11月 2016
「さ…さたけ…。」 鍋島の後方2メートルで木刀を手にした佐竹はサングラスをかけている。 「頭が痛いか?鍋島。」 自身の頭部を手で抑える鍋島を佐竹は遠い目で見つめた。 「別に…。」 「まぁ…お前に破滅に追い込まれた人間に比べれば、その痛みはクソみたいなもんだから我慢しろ。」 「て…てめぇ…。」 「その頭、昔っから出来が良かったよな。」...
五の線 · 21日 11月 2016
「思いっきり泣いて少しは気が済んだか。」 落ち着きを取り戻しつつある麗にこう声をかけると、彼女はかすかに頷いた。 「お前さんの扱いはワシの管轄じゃない。然るべき人間があんたを待っとる。」 そういうと古田は時計に目を落とした。時刻は1時15分である。 「佐竹さん。やわらやと思います。」 「いよいよですか。」...

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